桔槹9月号から

写真は「写真AC」のフリー素材を加工使用

さはやかや鳥語木語に身をゆだね  西山 逢美

季語「さわやか」からは、秋の澄んだ大気とすがすがしさが伝わってくる。作者は自然の中で、鳥のさえずりや木々のささやきに身をゆだねることで、心身を解放し、安らぎを得ているのだろう。この自然との一体感は、私たちが吟行会で実感することでもあるが、「鳥語木語」という言葉によって、それが具体的に浮かび上がってくる。

ところで、「鳥語」は一部の辞書に鳥の鳴き声と載っているが、「木語」という言葉は辞書には見当たらない。昭和63年の牡丹焚火の講師であった俳人、山田みづえ氏が「木語」という句集を刊行し、同名の俳誌を主宰されていたので、この言葉自体は知っていた。掲句のそれは、木々が語りかけるように感じられることを表現していると思われる。この句には、自然と一体となることで得られる幸福感や安堵感が描かれている。(選評:永瀬 十悟)             


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