桔槹6月号から

写真は「写真AC」のフリー素材を加工使用

飛び上る飛魚の青したたらす 小野 佳子

景の大きい句だ。「飛魚」の句は珍しいので題詠かもしれないが、海面上を飛翔する姿に臨場感がある。この句の「の」は主格の格助詞で、「飛魚が青をしたたらす」と読める。したたらす青は、飛魚自体の青であり、さらには空と海の青でもある。青一色の大海原が見えてくる。

この句を読み、私はかつて船旅をしたときに、海中から飛魚がつぎつぎと飛び出し、海面を一直線に滑空するのを見たことを思い出した。まさに「青したたらす」であった。

仮に題詠としても、そこに作者の体験や想像が込められ、ときには作者自身が思ってもいなかった句ができることがある。それもまた俳句の醍醐味であり、題詠の面白さである。(選評:永瀬 十悟)