桔槹5月号から

写真は「写真AC」のフリー素材を加工使用

たましひと猫を開放すれば春  茂木佐貴子

ある雑誌に掲載された「俳句の新しさとは」について著名な俳人達が述べている章があった。ある俳人は「新しさと目新しい事」とは違うと、またある俳人は「水平的な新しさと垂直的な新しさがある」水平な新しさとは新奇な題材や今風な言葉など、垂直な新しさは掘り下げて見出す心の新しさだと。そして垂直の新しさが重要だと書いていた。この言葉に確かにその通りだと心に響いた。さて、投句された句のどれもが、真新しい言葉などは使われず淡々と詠まれているが、何か新しい風が体を通り抜けたような感じにさせられた。そこに作者の心情がきちんと読み取る事が出来る。人事句は勿論だと思うが、大景を詠んでもそこには必ず自分がいると言う事が大切であると思う。この句によりなお強く思ったことである。魂を解放することと猫を解き放つ事と同列に置き、そうすれば春になるよ、なのである。この句を詠み私の心も解放された。

                                             (選評:江藤 文子)