雨のきうり天王祭を詠む
~句会参加者は二十名に~
去る七月十四日、須賀川の夏の風物詩・奇祭「きうり天王祭」は、東北電力須賀川営業所前に御仮屋が据えられ宵祭りが催された。それに伴い、恒例の同日の吟行句会が実施された。この祭は、この地方の特産品である胡瓜二本を供え、護符がわりに別の胡瓜一本をいただき、それを食べると一年間病気にかからないと伝えられる須賀川の伝統行事である。
宵祭りは日曜日と重なったことから、始まるや否や御仮屋の前に胡瓜二本を手にした老若男女の長蛇の列ができた。その後暫くして雨粒が落ち始め、やがて本降りとなり、祭りが果てるまで断続的に降り続いた。
雨天だったため、ほとんどの句会参加者が予定時刻前に、会場であるホテルサンルート須賀川に集合した。五時三十分一人三句ずつの投句を終えた後、江藤文子代表、永瀬十悟同人会長の挨拶があり、夕食を挟みながら句会がスタートした。今年で五回目となる本句会は、参加者数が前回より七名多い二十名となった。その中には二十代、三十代の会員もおり、期せずして世代間交流の場ともなった。また、今回もJA夢みなみ様のご協賛により、互選最高得点句にきうり天王祭賞として岩瀬胡瓜一箱を、また、桔槹集選者の江藤文子代表並びに永瀬十悟同人会長の各特選一句に選者色紙がそれぞれ贈呈された。
ところで、前回から導入した「きうり天王祭」の傍題の使用割合を確認したかったため、全投句数六十句の季語を分類してみた。その結果、「きうり天王祭」が十一句(十八・三%)、「きうり祭(さい)」が二十五句(四十一・七%)、「きうり祭(まつり)」が一句(一・七%)、祭り等「その他」が二十三句(三十八・三%)の内訳となった。
音数の少ない「きうり祭(さい)」の割合が最も高かったのは、やはり使い勝手の良さからであろう。ただこれら傍題は、現在、一般に広く認知されたものでないことを認識しておかなければならない。
しかし、九音ある「きうり天王祭」だけで詠み続けることは作句のハードルが高いばかりか、多様な表現の追及と言う点からも難しく厳しいものがある。作句の幅を広げながら、本行事を末長く詠み続けるには、違和感なく、祭事の本意を損なわない、適度な音数の傍題は許容されるのではないかと考える。我々は今後、祭りの正式名称を大切に守り続けながら、傍題の一般への理解と普及浸透に努める必要がある。きうり天王祭賞等入選句は次のとおり。
きうり天王祭賞(互選最高得点句)
供ふるも受くるも両手きうり祭 佐藤 健則
江藤文子桔槹集選者選
◎特選
雨に溶けるこの世の匂ひきうり祭 石山たま江
○入選
産土の神は雨神きうり祭 伊豆 周治
きうり祭一句授かるまで歩く 有馬 洋子
青河童潜む夜雨の夏祭 伊豆 周治
やはらかな足音きうり天王祭 佐藤 幸二
丹精を奉納きうり天王祭 渡辺 圭子
きゆうり祭雨中も楽し少年ら 丹治 道子
雨足に追ひつかれたりきうり祭 石山たま江
永瀬十悟桔槹集選者選
◎特選
降り出していよよ佳境のきうり祭 佐藤 健則
○入選
産土の神は雨神きうり祭 伊豆 周治
蕉翁に見せたやきうり天王祭 佐藤 秀治
きうり天王祭きうりアイスを舐めながら 髙市 宏
雨は承知よ須賀川のきうり祭 佐藤 秀治
ずぶ濡れの人の寄せあふきうり祭 武田 貴志
雨に溶けるこの世の匂ひきうり祭 石山たま江
傘さして乳母車押すきうり祭 髙橋 富子
(文責 佐藤健則)