2024年度牡丹焚火俳句大会


令和六年度 牡丹焚火俳句大会結果報告

 

11月16日(土)当日は小春日和となり、講演会は予定通り午後2時に牡丹会館で始まった。受講者は約60名。講師は桔槹と縁の深い黒田杏子を師と仰ぎ、「藍生」創刊からの会員で現在俳誌「青麗」主宰の髙田正子先生。先生は俳人協会評議員で、NPO法人季語と歳時記の会理事。中日新聞俳壇選者、田中裕明賞選者などをつとめる。今回の演題は「青邨の黒牡丹、杏子の白牡丹」。

江藤文子桔槹代表挨拶の後、永瀬十悟同人会長から講師の紹介があり、講演に入った。

講演では、はじめに黒田杏子とその師山口青邨の関係で、杏子が一旦俳句から遠ざかり、青邨に再入門をした時期について、刊行物によってズレがあることの指摘と、そのズレの生まれた理由について、杏子自身の拘りも含めての考察を語られました。

また、黒田杏子と牡丹の関係を、エッセイや数々の牡丹の句を例示しながら解説。若い頃は野の花が好きで「豪華な牡丹」には関心が無かったこと。青邨に再入門するころに「牡丹に開眼」したこと。その理由のひとつに青邨の自宅の庭「雑草園」の牡丹が関わること。さらに40歳代に桔槹主催の牡丹俳句大会で須賀川牡丹園に招かれたことなどが関係し、その案内には若い頃の永瀬十悟同人会長が関わっていたことなどをエッセイなどの資料を示しながら話されました。

さらに、青邨と牡丹の関係では、若い頃は白牡丹が多く詠まれ、昭和39年から黒牡丹の句が詠まれ始め、増えてゆくこと。したがって杏子は、再入門後に雑草園の黒牡丹を見たことなどを例句を挙げながら解説されました。

牡丹の俳句を通して観た青邨と杏子師弟の美意識の変遷には興味深いものがある。講演後の会場からの質問に、これまでに『蛍』など4冊刊行されている黒田杏子俳句コレクションの5冊目に「牡丹」も予定があるのかという質問があったが、今のところその予定は無いということであった。

つづく4時30分からの牡丹焚火では、須賀川市長、江藤同人会長、ゲストの髙田正子講師らによって火入れ式が行われた。来場者は180名(昨年は150名)ほどで、桔槹関係者が約半数を占めた。今回の来場者の増加については、俳句を募集して紹介する夏井いつき氏のラジオ番組で牡丹焚火が兼題とされたことも大きく関わっているようで、県外や遠方からの来場者が増えたものと思われる。

髙田正子先生からは、初めて見た牡丹焚火の感想と当日詠まれた俳句をご寄稿いただいたのでここで紹介いたします。

 

感想     髙田正子

須賀川の牡丹園は私にとって、いえ私のみならず、旧「藍生」の会員にとって「聖地」と呼べる場所です。先師・黒田杏子がたびたび訪れ 、作品という足跡を印した場所だからです。まずエッセイ集『黒田杏子歳時記』(1997年刊)に、夜明け前の牡丹園を訪う話があります。

この園の何万という牡丹が夜の眠りから覚め、朝露に濡れた身をゆっくりと起こし、巨大な花びらをほどいてゆく瞬間の生命力。 

「暁けてくる牡丹園」 

読むたびに、ほうとため息が出ます。このとき同行してくださった「桔槹」の永瀬十悟さんは三十四歳、先生は四十九歳だったそうです(1987年ころということになります)。

いつか私もと思うばかりであった牡丹園にはまた、剪定の枝や枯死したを火にくべて弔う行事がありました。

音もなくあふれて牡丹焚火かな 黒田杏子

すすみ出て牡丹の榾を投じけり  同

句集『一木一草』(1995年刊)に収められた句です。かの地は夏も冬も佳し。私たち「藍生」会員の脳裡には、いつしかそう畳み込まれていたのでした。

先生の急逝後はさながら荒海に揉まれ、曠野をさまよう心でしかありませんでしたが、ある日「永瀬です」と牡丹焚火へのお誘いの電話を頂戴しました。遠くにぽっと火が見えました。十一月に須賀川へ行く。楽しい目標ができました。

そうして迎えた当日は晴れて風も無く、コート不要の暖かさでした。二十年通っているという方が、かつて無い牡丹焚火日和だ、榾の嵩も高い、とおっしゃっていました。

いよいよ「すすみ出て牡丹の榾を」くべる瞬間が来ました。ですが、思いのほか炎が高いのです。私の背丈を軽く超えています。炎に仕る姿勢をとると私が焦げる! 手渡された一つかねの榾を、私は本能的に「投じ」ていました。あとで思いました。短く整えられた榾でしたから、「散華」の法要のように、もっと勢いよく撒けばよかった、と。

翌朝焚火跡へ行くと、見事な漆黒の小さな山ができていました。一つ一つ細い榾の形のままに、朝露に濡れていました。舎利のようだと詠んだ方がおられましたが、その通りです。ひとつまみ賜った舎利は、大切に包んで持ち帰りました。他の香木と練り合わせてお香にするとおっしゃった方がおられましたが、さてどうなったでしょう。大切な人を思うよすがになれば、牡丹も冥利に尽きることでしょう。

 

【髙田正子先生作品十句】

   供養の火

            髙田正子

  

くくられて朝日に冷ゆる牡丹榾  

またひとり抱へて来たる牡丹榾

先生へ奉らむと牡丹焚く     

牡丹焚くはじめは風の音遠く

花びらのごとく投じて牡丹榾

まつすぐに猛りて牡丹供養の火  

ぼうたんの姿はかくや供養の火

ぼうたんの祈りの炎継ぐ仕事

牡丹榾なほ紫の息づかひ     

バンダナを外すぼうたん焚き納め